まず注目したのが、京都競馬場の馬場の荒れ具合です。
仮柵を内側に移動したとはいえ、テレビ画面で観ても一目瞭然であるぐらい、芝が痛んでいました。
良馬場発表ではありましたが、チカラのいるコンディションであることは疑いようもありません。
こういう日は、逃げ馬にとってはなかなか厳しい展開になりがちです。
スピードに任せての行った行ったのレースになることは、あまりありません。
紙面を見ると、ダントツの一番人気が1枠1番のレディオブオペラ。
この距離で連勝中の4歳牝馬であり、その大半が余裕残しの楽勝であった事が評価され、直前の単勝オッズは140円でした。
しかし、この時既に私は、同馬が危険な一番人気馬であると見抜いていました。
理由は以下の3つです。
逃げ馬に有利とは言えない馬場状態であること。
すぐ隣の1枠2番と2枠3番に、実力のある馬がおり、マークされる公算が高かったこと。しかも騎手が岩田と浜中。
同馬の騎手が藤田で、ここ数年めっきり調子を落としていること。
140円は、明らかに買われ過ぎだと思いました。
更に追い打ちをかけたのが、馬体重マイナス14kg。
これはダメです!とても買えません。
馬体重はそれほど参考にする必要はない、と私は言いましたが、ここまで明らかなサインが出ているとさすがに見逃せません。
連戦連勝で出走してきている若いアガリ馬は、馬体重をキープしていることが大切です。
回を追う毎にメンバーは厳しくなるなかで、勝ちを積み重ねていくのですから、消耗度は大きいはずです。特に若い馬であれば、馬体の成長分も欲しいところです。
ですので、少々体重が増えていた方が安心して買えます。
最低でも、プラスマイナス0kgで出走して欲しいところです。
この場合のマイナス14kgなど「馬が消耗している」サイン以外のなにものでもありません。
以上の理由により、私は㈰レディオブオペラを切りました。
さて、困ったのは本命馬の選択です。
岩田騎手騎乗の㈪ストレイトガール(単勝520円)
浜中騎手騎乗の㈫ブレイズエターナル(単勝710円)
どちらを本命にするか非常に迷いました。
㈪のストレイトガールは、函館の芝1200mを主戦場として来た馬。
この馬に限らず、フジキセキ産駒というのは内枠が得意で、大外をぶん回すというよりも器用にインを突くというタイプが多いです。
(もし時間があれば、ストレイトガールの過去のレースビデオを観て下さい。フジキセキ産駒の特徴そのままです。)
サンデーサイレンス系統の馬には珍しく、短距離戦に良績があるのも好材料と言えました。
しかも、騎手は名手岩田康誠。
独特のスタイルからインを強襲するレースが、とても目立ちます。
(皐月賞のヴィクトワールピサがいい例)
しかし、この馬は良績が函館のような小回りに集中しており、京都競馬場の長い直線に脚質が合うのか、未知数な部分がありました。
また、夏馬というイメージも根強かったため、この厳冬期の京都で走るのか、疑問でもありました。
これに対し、㈫ブレイズエターナルは、京都の芝1200mに実績があります。
これまでのレース実績でいうとストレイトガールに軍配があがりますが、中段から後方でレースが出来る強みがありますし、前走で減った体重を戻して来たところも評価出来ました。
鞍上も、一度この馬を経験しています。
非常に悩みました。
悩んだ末に、私が下した決断は次の通りです。
岩田と浜中、両方の単勝を購入。
どちらか一つ選べと言われたら、不安要素の少なかった浜中の㈫を選んでいたと思います。しかし、岩田の㈪を切りきれなかった。
競馬にはこのように「突き詰めるとこの二頭のうちどちらかだろう」という事がままあります。
オッズにもよりますが、そういう時は単勝を複数買えばいいのです。
レースは、逃げた㈰レディオブオペラを直線で㈪ストレイトガールが捉え、そのまま優勝。㈫は6着でした。
単勝一点にこだわっていたら、負けていたのです。
こういうことが競馬には、よくあります。
㈺ブライトライン、㈪アドマイヤロイヤルが、それぞれ一番人気、三番人気に指示されていました。
私にはこの二頭が、危険な人気馬に映りました。
そもそもこのレースは、一番人気から五番人気くらいまでは、それほど実力差がないと思っていました。
戸崎騎手の㈺ブライトラインが辛うじて一番人気に支持されてはいたものの、当日午前中の単勝オッズは350円近辺をウロウロ。
最終的には280円まで落ちましたが、それでも二番人気のドリームバレンチノとは120円しか差がありません。
ちなみに前日までは、ドリームバレンチノの方が一番人気でした。
ブライトラインは弱い馬ではなく、東京のダート1400mも走るのですが、この馬が人気になっている理由は、前走のG1レース、ジャパンカップダートで4着に入った事です。
ところが、ここに盲点があります。
レースをよく振り返って欲しいのですが、当日のブライトラインは7番人気です。その前のみやこステークスを勝ち上がっている割には、かなりの低評価だと言えます。
みやこステークスでブライトラインに敗れたローマンレジェンドの方が、ジャパンカップダートでは人気になっています。
そのローマンレジェンドは、ジャパンカップダートを惨敗。
何が言いたいかというと、みやこステークスはG3ではありますが、相当にレベルが低かったということです。
みやこステークスはジャパンカップダートのトライアル的なレースであり、この年もみやこステークス組が6頭も出走しておりますが、1頭として馬券に絡んだ馬はいません。
この事実だけをもってしても、トライアルの名にふさわしくないメンバー構成だったということです。
また、ジャパンカップダートの4着も、福永騎手が相当に上手く乗ったな、というイメージがあります。
馬券圏内の3頭とは差があり、着順だけで評価はしにくいところです。
しかもその福永は騎乗停止中で手綱を取れず、代役としてテン乗りの戸崎圭太。
戸崎は一流の騎手ですが、テン乗りは一枚割り引いて考えないといけません。
特に今回のような、人気が分散しているレースでは余計にそうです。
ブライトラインの単勝が800円位ついていたら、この馬を本命にした可能性もなくはないですが、280円は明らかに買われ過ぎだと思いまいた。
以上が、単勝からこの馬を外した理由です。
シルクロードSのレディオブオペラほどではないにしろ、根拠を持って切っています。
三番人気のアドマイヤロイヤルについては、もっと明確な理由をもって排除しました。
それは騎手です。
四位騎手の最近の成績をご存知でしょうか?
ディープスカイでダービーを勝ったこの人は、なんと2011年からの3年間は、リーディングベスト20にも入っていません。
重賞となると、もっと燦々たる結果です。
G1レース13勝を含む、68の重賞で勝ち星を挙げたこの男が、2011年以降の重賞勝ちに限ると、僅かに2鞍です。
一体、どうしたというのでしょう。
馬がどうのこうの言う前に、まず鞍上が不安で本命には出来ません。
レポート内でも説明しましたが、レースの格が上がれば上がるほど、騎手を重視しないと馬券に結びつきません。
騎手の世界はトランプの「大富豪」ゲームに似ていて、レースで勝てば勝つ程、良い馬を回してもらえるので更に勝ち星が増える、というシステムになっています。当然、逆もまた然り、です。
どこかの厩舎の専属騎手であればまだいいですが、フリーのジョッキーだとこの傾向は更に強いものとなります。
騎手の世界はシビアなものですから、一度落ち目を見ると、なかなか這い上がって来れません。
それは大きなケガが原因であったり、厩舎との関係が悪化した結果であったりと、理由はさまざまですが、復活するのはかなり難しいものです。
今だと、藤田騎手、後藤騎手なんかがそうですよね。
あの武豊騎手でさえ、今は完全にスランプを脱出したと言えますが、一時はどの新聞を読んでも「武豊は終わった」と書かれていましたから。
キズナでダービーを勝った時の、彼のインタビューが印象的です。
「僕は帰って来ました!」と言ってましたよね。
まさにその通りの感想なんだろうな、と思います。
話が逸れましたが、騎手がスランプに陥ると、立て直すのは難しい。
可能性はゼロではありませんが、単勝をごっそりと買うのは控えるべきです。
「スランプ騎手の単勝を買うのは、その騎手が再び重賞を勝った後にせよ」
これも、私が作った格言の一つです。
重賞で、四位、後藤、藤田を買うのは、復活を見届けた後にすべきです。
アドマイヤロイヤルの実力については、ブライトラインと同じかやや下、程度に捉えていました。
仮に騎手がルメールにでも代われば、本命候補だったかもしれません。
こうして二頭の人気馬を切ったわけですが、またしても本命馬に悩みました。
私が有力だと思った馬は、㈮ゴールスキー、㉀ドリームバレンチノ、㈱シルクフォーチュンの三頭です。
この三頭は全て臨戦過程が異なりますので、一概にどの馬が強いとは言い切れませんでした。
レース展開一つで着順が代わるような関係ではないかと思います。
騎手もそれぞれベリー、内田、横山と、減点材料はありません。
ここで気にすると思うのは、馬の年齢です。
ゴールスキーとドリームバレンチノは7歳、シルクフォーチュンは8歳です。
ですが、この時期の馬年齢は、それほど気にしない方がいいですよ。
7歳と言っても、ほんのちょっと前まで6歳だった馬です。
同じ7歳でも、1月開催の7歳馬と、12月開催の7歳馬では、全然意味が違いますからね。
この事は盲点とも言えるので、年始シーズンの高齢馬を狙うというのは、戦術的にアリです。
特に、ダートのレースは芝よりも高齢馬が活躍する傾向にあります。
芝で成績がふるわなくなった高齢馬が、ダートに転向して復活するという話はよく聞きますし、芝よりも脚に優しい分、長く競争生活を送れるからではない
かと考えております。
この三頭を検討した結果、まず㈱シルクフォーチュンを切りました。
この馬は確かに追い込みの脚は強烈ですが、あまりにも展開に左右される上、出遅れ癖があるからです。
武蔵野SのVTRを観て頂ければ一目瞭然なのですが、さすがに単勝にするには勇気がいります。
厩舎サイドもこの馬の戦法を決めているようで、どんな場合でも最後尾を追走し、直線に賭けるという作戦です。
左回り、右回りは問いませんし、ハマれば確かに強烈なのですが、それにはもっとペースが上がるようなメンバー構成が必要ですね。
もう引退しましたが、ダートなら例えばエスポワールシチーやトランセンドのような、強烈な先行馬が揃った時のダークホースになります。
まだまだ馬券になる馬だと思います(実際、今回も3着に来た)が、単勝を買うのはここではないとして、パス。
残った二頭のうち、私がより本命に推していたのは、ベリーにスイッチした、㈮ゴールスキーです。
理由はいろいろありますが、私は特に斤量に着目しました。
斤量に関してあまり気にしない競馬ファンが多いみたいなのですが、それは間違いだと思います。
気にしなくてもいいのは、軽量の時です。
前走52kgが53kgに増えるとか、逆に51kgが50kgに減ったとか。
こんなのは、ほとんど気にする必要はありません。
気にしなければならないのは、斤量が重い時です。
特に、牡馬なら57kg、牝馬なら55kgを基準に考えて下さい。
この斤量を超えての1kg増は、サラブレッドにとっては大きいのです。
馬体の大きな馬であればまだいいですが、ゴールスキーもドリームバレンチノもシルクフォーチュンも、470kg〜480kg台で勝負してくる馬。
500kg超の馬が当たり前のダート馬としては、決して大きい方ではありません。
ちょっと話が逸れますが、ダートの競争や、芝の短距離戦では、馬体の大きい馬を狙うのが基本です。
古くはヒシアケボノとか、デカかったですね。
反対に、芝の長距離戦では、あまり大きい馬は来ないと思って下さい。
ライスシャワーも、ディープインパクトも、430kg〜440kg台で活躍した馬です。
(もちろん、シンボリクリスエスのような例外もありますので、あくまでも参考までに。)
イメージとしては、オリンピックの100m走では筋肉ムキムキの選手ばかりですが、マラソンランナーは無駄な肉は一切ありませんよね。
ああいうイメージでおおよそ間違っておりません。
さて、私が何が言いたいかというと、牡馬の57kg近辺の1kgは、みなさんが思っている以上に結果に影響するということです。
一概には言えないのであくまで参考程度にとどめて欲しいのですが、馬の斤量についてはこんな考えを持っています。
牡馬(古馬)
55kg以下…非常に軽い
56kg……….軽い
57kg……….標準
58kg……….重い
59kg以上…非常に重い
牝馬(古馬)
53kg以下…非常に軽い
54kg……….軽い
55kg……….標準
56kg……….重い
57kg以上…非常に重い
3歳の夏までは、この表よりマイナス2kg、3歳の秋以降は、この表よりマイナス1kgと考えて下さい。
斤量は、特に牝馬には効いてきます。
57kgを背負った牝馬が勝ったレースなんて、ちょっと記憶にないくらいです。
この1kg差の斤量と、外国人のベリーで勝負をかけてきたという点が、最大の理由でした。
このレースの本命は、㈮ゴールスキー。
ただし、㉀ドリームバレンチノがあまりにも不気味で、切りきれませんでした。
この馬は前走、前々走と、地方競馬を使ってきています。
地方競馬を使ってくる馬の実力は、わかりにくいものです。
同じ競馬でも、中央競馬と地方競馬は全く別モノと考えた方が無難です。
競馬と競輪くらい違うかも知れません。
私も、地方競馬はあまりにも当たらないので、もう何年も手を出していません。
なので、地方を圧勝して中央に参戦して来た馬を、甘く見ない方がいいです。
とくにこの馬の場合、中央競馬の芝短距離戦でも、そこそこの成績をおさめています。
これは切りきれないと判断し、私はゴールスキーとドリームバレンチノの単勝、二点買いをしました。
結果としては本命のゴールスキーが勝ち、ドリームバレンチノは惨敗しましたが、これでいいのです。
このレースの本命は割とすぐに決まりました。
勝ったトーセンスターダムです。
人気を集めたバンドワゴンについては、デビュー戦、前走ともに他馬を突き放しての楽勝だったために、実力以上に馬券が買われていました。
確かに現時点では強い馬の一頭には入ると思いますが、楽勝した次走、人気になっている馬は、買われ過ぎている事が多いです。
これは一概には言えないので、レースのVTRを良く観察することが重要です。
同じ競馬場、同じ距離、同じ時計、同じ着差での勝利でも、レース展開や芝の状態、他馬の強さなどによって、評価は全く変わってきます。
基本的に、私は時計を重視しません。
レースの時計というものは、レースの格が上がるからといってそれに比例するものではなく、コースレコードが条件戦で飛び出す事も珍しくありません。
基本的に時計を参考にして馬の強さは比較出来ない、と思っています。
ラスト3ハロンの時計で判断する、という競馬記者もいるようですが、これも根拠としては弱いですね。
そのレースのペースや、馬場コンディションによって、いくらでも時計は変わってきます。
アガリ33秒台の脚を使ったので、いつでもこの馬は終いはキレる、とは言い切れません。
全馬ともに、33秒台で走ったレースだったのかも知れませんから。
話を戻すと、バンドワゴンを切ったのは時計が理由ではないという事です。
まず、楽勝した次走の馬は買われ過ぎる傾向にある、という法則を知っていたので疑ってかかった、というところが出発点。
次に、父ホワイトマズルの傾向として、どちらかと夏に走る血統であるということと、3歳のこの時期よりも、古馬になってからの活躍が目立つ血統である点。
騎手が和田竜二で、重賞での信頼感が今ひとつであるという点。
京都競馬場が荒れてきており、マークされる形のバンドワゴンにとっては、今までのようにはいかないのではないか、という懸念。
そして極めつけは、そのバンドワゴンを目標にレースを運ぶのが、サンデーサイレンス系の申し子とも言える武豊。
ホワイトマズルもいい種牡馬ではあると思いますが、トーセンスターダムの血統には敵いません。
何しろ父ディープインパクト、母の父エンドスィープです。
京都という長い直線のある競馬場で、この距離。
走らない方がおかしい。
バンドワゴンとは違い、前走は脂っこいメンバーと戦ってきており、アタマ差ではあるものの、一頭だけ違う脚色でキッチリ差しきっています。
(こういうのも、レースVTRを観ないとなかなかわからない)
というわけで、本命はすんなりとトーセンスターダム。
対抗はバンドワゴン。
それ以外の馬は、二枚も三枚も落ちるメンバー構成でした。
何度も言いますが、2歳・3歳のレースは、血統を重視して下さいね。
特に重賞では。これ、重要です。軽く考えている人、多いです。
さて、こんな感じで狙い目はすんなり決まったのですが、アタマを悩ませたのは馬券の買い方です。
突き詰めれば競馬というものは、馬券の買い方が難しい。
これは、中級者以上の競馬ファンであれば、なんとなくおわかり頂けるかと思います。
このレース、一番人気は㈭バンドワゴンで、160円。
二番人気が㈰トーセンスターダムで、250円。
ちなみに、馬連㈰−㈭は150円、馬単㈰−㈭は380円。
この二頭以外に有力な馬がいなかったので、他の馬の数字はあまり記憶にありません。
さて、あなたならどう買いますか?
私はこのレースを購入して的中させたので、結果オーライと言えますが、冷静になってこのレースを振り返った結果、最善の作戦は、
「購入しない。見送る」
というものだったと思います。
頭数が少ないというのも影響していますが、いくら自信があっても、このような低オッズのレースで勝負するというのは、長い目で見ると良くないことです。
参考までに言っておきますと、このレポートをここまで読んで、かつ馬連㈰−㈭に大勝負、という判断を下す人は、今すぐ競馬を止めた方がいいです。
(本レポートの内容を全く理解していない証拠です)
馬単㈰−㈭に大勝負、ならまだわかりますが、やはり期待値を考えるとおすすめ出来る馬券ではありませんね。
ちなみに私は、㈰の単勝を10000円だけ購入しました。
いわゆる「勝負」ではありませんが、レースに参加しただけの金額にしてはちょっと大きいので、自分でもどっちつかずの中途半端な馬券を購入してしまったかな、と反省はしております。
−目次−