もうこのレースは、新聞の出走表を見た瞬間に閃いたレースです。
偶然にも、ミホノブルボンとライスシャワーが同枠。
何かの因縁を感じました。
ミホノブルボンは、今は亡き故戸山調教師が残した、最高傑作と呼ばれたサラブレッドです。戸山厩舎と言えば、とにかくスパルタ調教を馬に課す事で知られていました。ミホノブルボンのお尻のあたりの筋肉は、まるでサイボーグかなにかのように、隆々であったのを覚えております。
デビュー以来、ここまで7戦7勝。
単勝100円台の圧倒的人気を背負い、どの新聞でも本命にしておりました。
対するライスシャワーは、これまでミホノブルボンには4戦して全て敗北。
もともと、ダービーでブルボンの2着に入ったことすら、フロック視するマスコミも多かったように思います。
世間は、ミホノブルボンの三冠達成を期待する雰囲気で、お祭りムードでした。
ですが私の眼には、この菊花賞は絶好の勝負レースに見えました。
ミホノブルボンは、典型的な危険な一番人気馬!
元々母方の血統がステイヤー向きではなく、ダービーでは距離不安がささやかれていたのですが、蓋を開けてみれば圧勝。
これで、同馬の距離不安が快勝されたように世間は書き立てましたが、私は疑問でした。
「ちょっと待て。2400mのレースで距離を不安視していたのに、3000mの菊花賞でその事がそれほど話題にならないのは変だぞ。」
「久しぶりの三冠馬が生まれるかもしれないというお祭りムードで、その事には敢えて触れない向きがあるのではないか?」
「しかもこのレースには、キョウエイボーガンという同型の逃げ馬がいる。
今までとは状況が違う。」
圧倒的人気馬をいつでも疑えというのではありませんが、その馬が何故一番人気になっているのか?
という理由を考えることは、重要なことです。
このレースの場合、ミホノブルボンが一番人気である事自体は不思議ではないのですが、オッズがどう考えても異常でした。
買われ過ぎです。
お祭りムードが、距離不安を打ち消していました。
対するライスシャワーは、血統的にバリバリのステイヤーです。
もともとカラダが小さく、このレースには430kg台で出走しています。
これは牡馬としては相当小さい方で、完全なマラソンランナーの様相を呈していました。菊花賞にはうってつけです。
それに、ミホノブルボンには4戦して全て負けているとは言え、レース毎に差を詰めています。
皐月賞では影も踏めなかった存在でしたが、ダービーでは4馬身、前走の京都新聞杯では1馬身半と、確実に背後に忍び寄っていました。
結果は、残り100mで遂にミホノブルボンを捕まえて、ライスシャワーが優勝。
このレースから学ぶべき事は、以下の通りです。
レースに、何かいつもと違う異常なムードが漂っている時には、その渦中の馬を疑ってみて下さい。
オッズが、馬の実力と乖離している時があります。
また、特に若い馬の重賞(クラシックなど)では、血統を意識すべきです。
余談ですが、明らかに距離が長かったミホノブルボンは、一度はマチカネタンホイザにも差されそうになりましたが、根性で差し返しての二着。
負けてなお強し、の印象を残しましたね。
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